【交通事故】~治療費打ち切りへの対応策~

2015/01/21

 

 

 交通事故の被害に遭い,加害者加入の任意保険会社が治療費を負担して通院を継続していて,まだ怪我の症状があるにもかかわらず,保険会社の担当者が突如として治療費の打ち切りを通告してくることがあります。特に怪我の内容が頸椎捻挫(いわゆる「むちうち症」)の場合には,よくあるケースです。
 このような場合,被害者としてどのように対応すべきでしょうか。

 

1 医師に相談し,怪我の状況を確認する。

 

 まずは,通院先の担当医に,今後,通院を継続することにより症状が改善する見込みがあるか否かを確認しましょう。
 ここで,これ以上症状の改善が見込めなくなった段階である「症状固定」であると医師が判断するのであれば,後遺障害等級認定手続に進み,まだ治療の効果が見込める段階であると医師が判断するのであれば,通院を継続します。

2 通院継続の方法

 

 通院を継続する場合,自費で通院することになります。
この場合,自己負担額を抑えるため,自由診療から健康保険利用に切り替えて通院するのが得策です。
 また,後に治療費を加害者側から回収するためには,治療費を打ち切られた時点で治療の必要性があったことを後に証明する必要があります。よって,怪我の状況に照らして,今後も治療の必要性がある旨を記載した診断書を取り付けておきます(なお,この診断書を取り付けた時点で加害者側保険会社に提示し,通院の継続を訴え,治療費の打ち切りの時期を延ばす交渉ができる場合もあるでしょう。)。
 治療期間,治療日数は,通院交通費や通院慰謝料の算定に影響を及ぼしますので,診断書を取得し,治療費打ち切り後も治療のために必要な通院であることを証明する手段を残しておくことは必須といえます

3 後遺障害等級認定手続の進め方

 

 医師が症状固定であると判断した場合,後遺障害等級認定手続を進めることになります。後遺障害の等級認定手続を進める方法は,事前認定(相手方の任意保険会社を通して等級認定の手続をする方法)と被害者請求(被害者自らが直接自賠責保険会社に等級認定の手続をする方法)がありますが,いずれも損害保険料率算出機構において判断される点では同じです。
 どちらの手続によるべきかという点については,事前認定の方が後遺障害診断書を任意保険会社に提出するだけなので手続面での負担が軽く済むというメリットはありますが,任意保険会社は必要最小限の資料だけを損害保険料率算出機構に提出するだけですので,例えば,後遺障害診断書の記載が不十分であってもそのまま提出されてしまいます。
 他方,被害者請求であれば,後遺障害診断書の記載が不十分であれば,それを補う資料の提出も可能ですし,その他,後遺障害の存在を裏付ける資料を添付して損害保険料率算出機構に等級認定を求めることが可能です。
 このような違いから,同じ症状を残しながらも,事前認定だと「非該当」になったが,被害者請求だと後遺障害が認められたという場合も生じ得ます。
ですので,残存した症状の内容から,後遺障害の存在と該当する等級が明らかな場合を除けば,被害者請求によった方がよいということになります
 もっとも,どのような後遺障害診断書の記載があれば十分なのかは高度な専門的判断が必要な事柄ですので,詳しい専門家に相談若しくは依頼して手続を進めるべきでしょう。

 

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