【交通事故】家事従事者(主婦・主夫)の休業損害

2015/03/16

 

 

1 休業損害とは

 

休業損害とは,傷害により仕事ができなくなり,得べかりし利益を失ったことに対する損害で,その発生期間は,原則として事故発生時から傷害の治癒または後遺障害の症状固定日または死亡日までの期間となります(症状固定日または死亡日の翌日以降の逸失利益は後遺障害逸失利益または死亡逸失利益として算定されます)。

家事従事者(性別,年齢を問わず,現に主婦的労務に従事する者。女子だけでなく男子も含まれる)が休業した場合,休業損害が発生すること自体,今日では争いはありません(最判昭和50年7月8日・交民8巻4号905頁)。

 

2 休業損害算定の一般的な計算式

 

一般的には,以下の算定式によって家事従事者の休業損害は算定されます。

基礎収入(賃金センサスの女子平均賃金)×(休業日数/365日)×労働能力喪失率

 

(1) 賃金センサスは女性労働者の全年齢平均のものか,年齢別の平均か

 

家事従事者の基礎収入として用いられる賃金センサスは,女性労働者の全年齢平均によるのか,年齢別の平均によるのか,裁判例も統一されているわけではなく,個々の事案に応じて使い分けています。
一般的には,全年齢平均によるべき場合が多いと思われますが,例えば,60歳代後半で子どもが全員独立して夫と二人暮らしで主婦をしている場合のように家事負担が軽い場合には,全年齢平均より低い60歳から64歳までの年齢別平均賃金センサスを使うのが合理的といえます。

(2) 労働能力喪失率

 
事故による入院期間がある場合,その期間は一切の家事労働ができなくなることから,入院期間の労働能力喪失率は100%といえますが,通院期間中の労働能力喪失率については,傷害の内容・程度,後遺障害の有無・内容,家事労働の内容,家事労働への具体的な支障の程度等を総合的に考慮して判断することになります(ただし,裁判例の中には,入通院期間全体を通して労働能力喪失率を認定したものもあります)。

(3) 兼業主婦の場合

 
パートタイマー,内職等の兼業主婦については,現実の収入額と女性労働者の平均賃金額のいずれか高い方を基礎として算出します。
仮に現実収入額が女性労働者の平均賃金額を上回り,かつ,事故後も現実収入額に影響がなかった場合,休業損害は認められないことになります。

 

3 裁判例

 

① 東京地判平成15年12月8日・交民36巻6号1570頁
妊娠中の専業主婦(固定時28歳,左足関節の可動域制限12級7号)につき,賃セ女性全年齢平均を基礎に,出産のため入院した8日間を除き,受傷日から出産のための入院の前日まで242日間は100%,退院の翌日から90日間は60%,その後症状固定まで50日間は30%で認めた。

② 名古屋地判平成11年4月28日・交民32巻2号703頁
主婦兼パートタイマー(53歳,左下肢神経症状12級12号)につき,賃セ女性学齢計50歳から54歳平均を基礎に,入院期間97日間は100%,その後症状固定まで288日間は70%を認めた。

 

 
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